一瞬の光の軌跡の物語 一度、落ち損ないましたら 太陽の重力に引き上げられて 気がつくとぼくは また星空にいました 今回はちょっと、だったけど 大丈夫、次があるよ 次は必ずうまくいくよ けれど少し時間がかかるから その間、世界を見てまわったら まぶしい太陽にそう励まされ ぼくはもう一度飛びました また落ちるために飛びました 言われたとおり時間がかかりそうなので その間、世界を見てまわりました 風を切る感覚も憶えてないから 本当に飛んでいたかどうかなんて 怪しいのですけれど ある距離を、時間をかけて 飛んでいる、という感じじゃなくて ある場所から景色を眺めて その一点が、ふと眼に留まって あ、あそこ。と思うとすぐにそこにいて そこからの景色を眺めているのです 視点だけどんどん切り替えてゆく そんな感じで、いろいろ見てきました もうあまり憶えていないのですけれど 世界はカタチに溢れていて カタチは不思議さを包みこんでいて その不思議さの中に 素敵さが隠されている気がして そんな素敵さをどこかに隠した 世界そのものが素敵に見えました そんなこんなしているうちに やがてその時がきてしまいました 落ちる所はもう決めてありました 前に一度、決めていた所です 好き勝手に落ちているわけではないんです 自分の行き先は、自分で決めているんです あとは、引かれるままになりました まばゆい光が全身を覆って その光が全てを消し去りました 世界を見てまわった記憶も 見てきた景色も、何もかも その時誰かが夜空を見上げていたら 一条の、そして一瞬の 光の軌跡が見えたでしょう これはそんな一瞬の 光の軌跡の物語 そうしてぼくはここに立ち ここから星空、見上げています >> Next |