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想い出が降り積もる路


想い出が降り積もる路を
歩きながら見上げると
空ではまたひとつ想い出が産まれ
ひとひら、ひとひら舞い降りてくる

想い出は降り積もり
その上にまた新しい
想い出が降り積もり
古い想い出は
新しい想い出を支えながら
やがて見えなくなってゆく

そんな想い出の上に
わたしは足跡を刻むけど
やがてはその足跡も
後から降り積もる想い出に
覆われてゆき

そして
足跡を覆い隠した
想い出の上にも
新しい想い出が
絶え間なく降り積もり
やがて見えなくなってゆく

なかには想い出のひとひらが
地面に降り積もらずに
わたしの頭や肩の上
そんなところに舞い降りて
いつまでもそこに居続けて
わたしの上に積もってゆく
そんなこともある

時折は積もらせたまま歩き
それでも時折は立ち停まり
わたしが埋もれてしまう前に
頭を振ったり肩を払ったりして
留まりたがる想い出たちを
積もるべきところへと還し
わたしは再び歩き出す

頭から振り払ったひとひらが
降りかかった目元で雫に変わり
頬を伝うこともある

手を差し伸べて
受けとめたひとひらが
冷たさを感じる暇もなく
己の躰を融かした海に
沈んで消えることもある

けれども
積もらずに融けてしまった
そんな想い出たちも
いつか、ぽとりと

想い出が降り積もる路へと
還ってゆく


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