ポケベルふるる 雪ふるふる真夜中の バイト帰りの坂道で 厚いコートの胸ポケットの中 ポケベルふるると 胸を揺すった ポケベルは 何も話さないけれど 「話したい」 ただそれだけの想いを伝え この胸、震わせる そうしてはじまる時間 あなたの声に辿りつくまでの時間 なんだろう、と想い巡らす時間 公衆電話を探して歩き回る時間 ようやく見つけた電話ボックスに 潜り込むまでの時間 かじかんだ手で 財布の中のテレカを探る もどかしい時間 カードが吸い込まれ 度数が表示され ようやく電話をかけて あなたの声に辿りつく それまでの時間に 指先で曇り硝子に書きつけた おかしな幾何学模様 想いが胸を震わせてから 最初の声を聞くまでに ずいぶん時間がかかったけれど そんな時間も全部 あなたのための時間だったんだ ポケベルふるる 胸を震わせてから あなたの声が 鼓膜を震わせるまで ねぇ、まだ憶えているかい そんな時間に、包まれていた頃 >> Next |