そら むかし、むかし 青く澄んだひとつの心が 青い空になりました やがて大地や海や 星々を見つめているうちに 青く澄み渡った空には 様々な気持ちが生まれ 様々な形の白い雲になりました 雲は生まれて流されて 形を崩して拡がって やがては消えてまた生まれ そんなことを繰り返しながら 澄んだ青の他、何もなかった空も 次第に豊かになってゆきました ある時、ふとしたことで 鈍色の小さな小さな雨雲が 空の中に生まれました 一度生まれた雨雲は 次から次へと湧きだして たちまち厚く拡がって 空を覆ってゆきました 暗くて重たい雨雲に 隙間を全て埋められて そのうち空は こらえきれずに泣き出しました 空の涙が生まれるところ 暗くて重たい雨雲は 空の悲しい気持ちでした ざんざんと空は泣き続けました ざんざんと涙をこぼし続けました ざんざんと、ざんざんと けれどもそうしているうちに すっかり涙を落とした雨雲は だんだん軽く薄くなり いつしか風に千切れてゆきました 散り散りになった雨雲の切れ間から 陽も射し込むようになった頃 空はようやく泣きやみました 雲間から伸びた光の筋に 涙の屑がきらきらと 弾かれているのを見て 空はうれしくなりました うれしい気持ちは いくつも持っていた空ですが 悲しみのあとのうれしい気持ちは それとは比べようもなくうれしくて 雨上がりの青空の 大きな虹になりました >> Next |