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秋猫


暦が九月になって
夏も終わりと感じた時
リン、と遠くで鈴が鳴った

あっ、きみが来たね
すぐそこまで来ているね

きみはいつだってそう
音も立てずに
気配も感じさせずに
そっと後ろから忍んできて
突然足首に頭を摺り寄せてきて
ぼくをびっくりさせて

そうして足元を見ると
そこにはもうきみがいて
ぼくを見上げて
にゃあ、って鳴くんだ

ぼくはもう
ここにいるよ、ってね

そうだった
だからぼくたちは
暦という鈴を
きみの首にかけたんだった

だって
きみはあまりにも
忍び足が上手だから
鈴でもなくっちゃ
気がつかないもの

すぐそこにまで
来ていても



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