夕暮れと共に地面を出て、木を登ってゆく蝉の幼虫


 まるで種子の発芽のように。


 発芽ではなく、それは花なのかも知れない。


 人生の最後のひと時だけ、繁殖のために咲かせる花。それが羽化した蝉たちなのかも知れない。


 初めて、か。久しぶりに、か。これから地上の世界を映す瞳。





 夜に咲く蝉たちは、美しい。


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