Azure Diary 平成二十三年 霜月 ■2011/11/06 日 蝉の羽化を見に行ったり、夏の台風で樹が倒れていたりした、近所の公園。昨夜、雨が降ったり止んだりの天候の中、煙草を吸いながら公園を散歩していた。木の枝の下で小雨が降り出して、葉にパラパラと雨の当たる音がして見上げたら、その枝にまだ、蝉の抜け殻がしがみついていた。 今日も雨。ふと、この時期に蝉の抜け殻はどのくらい残っているのだろう、と思って小雨の中、公園を一周してきた。見つけた抜け殻は5個。どれもしっかりとした形で枝に幹にしがみついていた。まるでここ2、3日に羽化したばかりのような。 これは8月に一斉に出てきた蝉たちの抜け殻が、落ちたり朽ちたりせず奇跡的に残り続けたものなのだろうか。それとも、季節を間違えて、出てきてしまった蝉の抜け殻なのだろうか。どちらにしても、残されているのはもう、この抜け殻だけ。 もうすっかり、秋の虫の声さえ少なくなった公園。葉を色づかせはじめた樹の枝に、この夏の残像のような空蝉。ふと蘇る、蒸し暑い夏のわんわんとした蝉時雨。枝の抜け殻を見上げる顔に当たるのは、冷たい冷たい秋の雨。 久しぶりに新刊で買った本を読んだ週末。金曜日の仕事帰りに自転車飛ばして池袋ジュンク堂へ寄って買ってきたのは、この本。 *書名: 『声を聴かせて〜性犯罪被害と共に、』 >>窓社HPの紹介文 >>作者様HP 解説や書評などは性に合わないので、本の紹介のみ。ただ、自分がインターネットでものを書き始めてから10年以上になるのだけど、こうして本の紹介をするのは、初めてのこと。作者様は、自分が『褐色に浸る時間』を書いていた時に、ほんのちょっとだけやりとりがあった方でもある。ご出版、おめでとうございます。多くの方に、届きますように。 ■2011/11/23 水 仕事は先週まで帰宅が日付けをまたぐ日々。俗に言う「定時23時」の状態。この時間になると遠距離通勤の残業者は泊まりに入るのだけど、自分は帰宅する。職住近接のこの有利さ。このために自分は引っ越したのだ。決して地震が起きるから引っ越した訳ではない。 先週の木曜日に、自分が主務を勤めてきた大きな会議が終了する。自分が主務となる会議は、内容の異なるものが年に二回。大抵は五月と十一月にあるのだけど、今年は五月の方が震災で流れ、先月頭になっていた。なので、通常は前期と後期に別れている二つの大きな会議が、立て続けに、という形になっていた。 こちらも三年目なので、まぁ何とかはなったのだけど、今年は会議の内容が震災を踏まえたものになっており、内容がこれまでと大きく異なっていた。両会議とも、今年のはこの職場の歴史上最大規模だった、といえる。 これは無事に終ったから言えるのだけど、まぁつくづく、いい時期にここに勤めていたなぁ、と思う。「いい」というのは「良い」「善い」という意味でもないのだけど。とにかく。会議だけではなく、今年一年の仕事全てにおいて。 勤労感謝の日。この祝日は元の宮中行事…収穫祭のようなものだったので、日付けは動かない、とのこと。今日は暦どおり休み。一年ぶりの街へ行く。 駅前の銀杏並木が美しい街なのだけど、銀杏はまだ色付かず。それでも街はもうすでにクリスマスの装い。季節感とのギャップに、何か焦りのようなものを感じる。自分に、ではなく。社会の側に、何となく感じる「焦り」。その焦りが、実際の季節を見えなくしてしまっている気がする。 なるべくまだ歩いたことの無い脇道を選びながら歩いてゆく。そうして辿り着いた、小さな喫茶店の狭い扉をくぐる。白と黒と、その間に存在する無限の階層が現す世界との、静かな対話のために。 ■2011/11/27 日 カーショップに車を持ち込んでエンジンのオイル交換とエレメント交換を兼ねて潤滑油系の点検。ATFがそろそろ交換してもいいかも、と勧められたのだけど、次の車検の際に回すことに。 ワイパー売り場を覗いたら、夏でも冬でも兼用できるタイプのワイパーが売っていた。これまでの金属製の多関節ではなく、プラスチック系の素材で一体成型されたもの。この構造ならブレード本体が凍結により柔軟性を失うこともない。説明書きを見ると、冬用のゴムに交換すれば冬にも対応、とのこと。大した使用機会は無いとはいえ、やはり冬走るのに夏ワイパーのままは不安な性分なので、購入。冬用ゴムは買わなかったのだけど、これなら凌げるべ。 埼玉の鳩ヶ谷のお店の駐車場で、雪虫を見た。貴重な雪虫かも知れないので、手ではなく袖で受け止めてみると、間違いなく。夏に飛んでいた小さなものではなく、北海道にもいるような大きな雪虫だった。帰り際、都内に入ったところで信号待ちをしている時にも、車の窓の脇をもう一匹、雪虫が飛んでいた。 ここにも、いるんだな。 それが数十匹、数百匹の群れになると歩行者や自転車の天敵でしかない雪虫も、この地で一匹二匹だと風情があっていい。正直、懐かしい。 雪虫が飛んだら概ね、初雪は2週間以内。その法則がこちらでも通用するのかどうか。とにかく。今日雪虫を見た、ということは、12月11日までに初雪が降るのかも知れない。 こちらの秋は気候もばらばら。秋の気候が安定しないので、今年は紅葉の足並みもばらばら。季節がよくわからなくなっていたのだけど、雪虫でリセット。暦にかかわらず、東京の季節はいま、晩秋と初冬のちょうど境目にある。 (更新情報) Poetryに詩集「ひとひらの雪」を掲載しました。 表題作を含む21編です。以前の詩のブログからの転載は、これで終了します。 >>詩集「ひとひらの雪」目次へ |