Azure Diary


平成二十四年 如月



■2012/02/12 日
 如月は、衣更着。旧暦ではもっと春に近いのだろうけど(梅咲月、ともいうくらいだし)現在の暦では、一年で最も寒い季節。こちらも夜にはキンと冷え込むことが多い。ただ、自転車で通っているくらいだから、外の寒さと言ってもそれくらいのもの。けれど、部屋は窓が二重でもないし、壁の断熱もないし、暖房はエアコンだけだし、意外と寒い…というか、暖まらない。
 帰りが10時以降になることが多いのだけど、それからだとエアコンはいくら全開にしても、部屋が暖まる前に寝なければならない時間になる。なるほど。だからこちらの家庭は「コタツ」なんだな、と納得する。火力にものをいわせて部屋をぬくぬくにし、室内では薄着でいるのが大好きなのが、北海道人。

 車が無事に車検合格。バッテリーとATFは今回交換した。
 元々寒冷地仕様なのでバッテリーは容量の大きいのを積んでいるのだけど、本州の車に比べて容量が大きかった、というのはもう一昔前の話で。現在はどの車も、車内の電化製品・電装品による電力の使用量が以前とは比較にならないため、どの車も容量の大きなバッテリーを搭載している。むしろ、自分が以前から標準で搭載しているバッテリー容量では、もう見劣りするくらい。
 状態は、多少オイルの滲みは出てきているものの、支障なし。ディーラーの整備の方には高評価で「大事に乗っていただいてありがたい」とのこと。完全にメンテナンスすると30万以上になるけれど、こちらの希望で整備は必要なものだけに留め、諸費用込みでおよそ17万円。次の車検は大丈夫かな、と呟くと、いやーまだいけるでしょう、と。それから、こういうタイプの車は、乗り換えようとしても今はなかなか無いですからね、と。そんな話しに花が咲く。
 とはいえ、向こうも売り手なので、一応新しい車も勧められる。今度こういうの出るんですよ。あのハチロクの後継…といっても、全然別物ですけどね。と。勧められたのは今春発売の「ハチロク」。まだカタログのみで実車はなし。おーハチロクったらあのレビン&トレノの。と、カタログをパラパラと。ああ、全然別モンだね、確かに。いいけど当分はこれで行くわ。FRは乗り馴れてないし、ね。


■2012/02/17 金
 春の異動に関する調整。場所はまだだけど、異動するとしたら引越は可能か、と訊かれる。元より「最後の一年だから東京都民になってみよう」という動機で現在地に住んでいるので、問題なし。その旨、答える。ただ、この一年があまりにバタバタしすぎていたので、ちょっと何か。ここをこのまま離れることに、後ろ髪引かれるような。そんな思いも、ある。住んだ、というより。まだ旅の途中、みたいだ。
 夜になって雪。ひと時、芝生が薄っすらと白くなる。けれど、帰る頃には殆ど止んでしまった。夜の道では雪の姿は見えないのだけど、街灯の光の中や、車のライトの光の中。光の中には、ちらりほらりと舞う雪の姿が見える。これが最後の雪だろうか。ふと、そんなことを思う。辛うじて結晶の形を保ちながら舞い降りてくる、雪。さすがに、こちらでは粉のような雪には出会うことなく。重たい雪しか降らなかった。
 こちらの人は、年にこうして数度しか出会わない雪を、大切に感じているんだなぁ、と思う。北海道にいた時も、東京で雪が降ると全国ニュースになるけれど、それを見て「あれくらいの雪で大騒ぎしてさぁ」と、思っていたもの。けれど、やはりこちらでは、雪は特別なものだ。その儚さも違う。だから、受け止め方が、北国とは根本的に違う。
 人が多いとはいえ、こちらの人は様々な地方から来ている人が多いから、自分のように冬は雪に埋もれる地方から来ている人も、多いのだろう。だから、何というか。雪は、滅多に雪が降らないこの街の人にとって、珍しいか、懐かしいか。どちらかなのだ。雪に対して、こちらの人は感性が繊細で、そして、優しい。
 北国の「圧倒的な雪」に対する感性と。こちらの「珍しい雪」に対する感性と。そのどちらにも、心を、開いていたい、と思う。どちらかがどちらかを否定するのではなく。優劣をつけるのではなく。その両者の間で、バランスを取ること。それが、双方の雪を知る、自分が感性を保つ位置、なのだと思う。
 もし北海道に帰って。東京発の雪のニュースに周りが「あれくらいの雪で大騒ぎしてさぁ」というようなことを言っていたら。自分は伝えよう。この街の人が、年に数度しか振らない雪を、どれだけ大切に、丁寧に、繊細に。思い深く、受け止めていたか、を。


■2012/02/28 火
 高校生の修学旅行以来の新幹線で行っていた関西出張が終わり、京都から東京都へ帰京する。と書くとややこしい。京都はかつての都だから、古人にしてみれば東下り、になるのだろう道程。
 行きは雲に覆われていた富士山が、帰りには姿を現していた。富士川と富士山。この景色が見たくて行きも帰りも富士山側の窓際の席にしたのだ。この日に見られてよかった。



■2012/02/29 水
 閏日。この日に生まれた人のことが、よく話題になる。閏年ではない年は2月28日と3月1日のどちらが誕生日になるのか、と。けれど、この日に亡くなった人も、同じなのだ。閏年ではない年は、どちらが命日になるのだろう。
 この文章はこの日付けに書いているものではないけれど、今日、祖母がかみさまになられた。百歳なので、そう言ってもいいと思う。しかし、それにしても。よりによってこの日を選ぶとは。さすがだと思う。


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