Azure Diary 平成二十四年 卯月 ■2012/04/04 水 先日は暴風雨。ベランダに置いてあったタイヤにはカバーがかけてあったが、搬出のためにカバーを開けてみると中は水浸しになっていた。ベランダから撤去して、玄関の外に出しておく。 今日は風が強いものの天候は回復した。ベランダにはいつものスズメがやってきたけれど、普段、居場所になっているタイヤが無くなったので、戸惑っているよう。部屋の中には入ってこようとしない。午前中にクロネコが来て荷物を出し終わり、部屋の中に残るのは車で積んでゆく荷物だけ、となる。部屋の中にはもう居場所はないので、河川敷を歩いてくる。堤防の上には桜の木が並んでいるが、ちらほらと咲きはじめたところで、残念ながら満開には間に合わなかった。けれど、眼下には船着場と河川敷に立つ木。視線を上げると、街並みとその奥に薄っすらと霞みがかった富士。そしてはっきりと見えるスカイツリー。いい景色の中に住んでいたな、と。改めて思う。 部屋の前の公園。こちらの桜は満開に近い。ふたつ残っている蝉の抜け殻は、先日の暴風雨にも落ちることなく、幹にとまっている。残っているのはどちらも桜の木だった。表面に溝が多い桜の木。爪の引っかかりがいいのだろうか。 この空蝉が落ちるのと、自分がここを出てゆくのと。どちらが早いか。ということをずっと思っていたのだけど。結局は。この空蝉はいつまで残るのだろう。もうここまで来たら、ひょっとしたら。夏まで残り続けてしまうかも知れない。 近くのステーキ屋で夕食の後、再び堤防の上へ。夕陽とシルエットの富士山を見て。近くの神社に御礼を兼ねてお参りをして。それからまた公園を通って帰ってくる。何も無い部屋は意外と広く。落ち着かないので、寝袋を拡げてラジオをかける。空っぽの部屋に、ラジオの音がよく響く。明日の朝、出立。午前中に新しい職場に着任し、午後から今日出した引越の搬入、となる。 本日をもつて、東京生活、終了。さよなら、東京すずめ。 さ、自分も飛び立とう。そしてまた、人生の章が改まる。 ■2012/04/05 木(転入日) 4時半に出て、のんびり走り、7時頃に到着。事務所はまだ開いていなかったが、自分では開けられないので人が来るのを待つ。人が揃った後、着任の行事と挨拶を済ませ、午前中は着任に伴う職場関係の各手続き。 午後に部屋の鍵を受け取り、役場への転入手続き。その後、警察署で免許の住所変更を行う。その途中で携帯にクロネコから電話が入り、もう間もなく到着します、と。 住所変更の手続きを終えてからすぐに引き返すと、クロネコはもう到着しており、そのまま荷物の搬入に突入。その途中でガス会社が来て、荷物の搬入と並行してガスの開栓の手続き。荷物の搬入が終ると同時に、NTTの方が来て、電話とインターネットの開設の手続きにに入る。体はひとつなので、この初日が一番大変。計画段階からギリギリの時間配分だったけれど、何とか無事に凌いだ。 その後、引き続き部屋の整理に入る。寝るスペースだけ確保して、本日終了。転入日を今日にしたので、今日から神奈川県民となる。 ■2012/04/06 金 転入者の紹介行事と新しい仕事の掌握。帰ってから引き続き部屋の整理。棚を組んで収めるものを収め、家電やパソコンを展開。パソコンは一台を通常展開、もう一台は、これまでの生活からパソコンとテレビを同時に点けることがないのが判ったので、テレビをモニター兼用にし、パソコンのモニター1台は出さないでおくことに。 ようやく人の住む部屋らしい姿になってくる。家具類のあらかたの配置を終えた後、前はロフトに直接布団を敷いていたので買っていなかったベッドと、ガスコンロを明日買いにゆくため、それぞれの寸法を測る。 夜中になって、ようやく部屋からダンボールの姿が消えた。それにしても、引越というのは。ダンボールとの戦い。けれど、今回はこれまで何度も引越で使用してきた不揃いのダンボールを処分し、職場から頂いてきた同一サイズのダンボールにしたので、積み込みも部屋への搬入後の積み置きも、かなり楽だった。 ■2012/04/07 土 昼まで爆睡の後、街の探索を兼ねて、リサイクルショップとホームセンター巡り。新品と中古を比較してみたけれど、ガスコンロは新品でも13,800円、パイプベッドも5,600円。そんなものなので、新品をホームセンターで購入する。帰ってから早速、ガスコンロの設置とベッドの組み立て。ベッド下のスペースは25センチあるので、折りたたむのが難しいパソコンのダンボール置き場とし、空きスペースに高さが丁度良い衣装ケースを収納する。 そういえばエアコンが無いけれど、ちょうど今の季節では急ぐ必要もないので、あとまわしに。工事が必要なので、引越繁忙期の今は避けて後々にすることに。 落ち着いてからベランダへ出る。新しい部屋は三階の部屋。目の前の高さまで梢を伸ばした桜の木と松の木がある。桜は若葉と花を同時に開くヤマザクラ。その向こうには河口近くの川があり、船が係留されている。 これは漁船というより、釣り船のよう。車の音に混じって、船の低いエンジン音が響いている。海までは直線で1キロもない。窓の網戸のアルミサッシを見ると、所々腐食がある。これは海風が運んでくる塩分によるもの。実家にいた時以来、久しぶりに海の近くに住むことになる。桜と松の梢の遥か高くに、円な月。 ■2012/04/08 日 引越間、溜まった洗濯物をまとめて片付ける。その後、街の探索へ。横浜ナンバーの車に囲まれながら、走る。そういえば、昨年。震災が落ち着いてからのドライブでこの辺りを走ったことがある。憶えのある風景がいくつか。まさか、ここに住むことになるとは、その時は露ほど思ってもいなかったのだけど。 周辺を探索した感じ、最低限の生活は徒歩でも充分そう。車で少し走ると、郊外に大きなホームセンター。この辺りはどこの街もそう変わらない。最寄り駅は寄り添うように二つあり、ひとつはJR。もうひとつは自分にとって初お目見えとなる、京急。どちらも徒歩圏内になる。 帰ってから、ネットでできる諸々の住所変更の手続きをし、引越間の日記をまとめ書きする。色々と引越の記録をとってみると、今回は道なりの移動距離は93キロ。人生4度目の引越で、2番目の短距離異動になる。 金額面は、クロネコが単身パックのコンテナふたつで38,800円。初期投資はガスコンロとパイプベッドで19,400円。後でエアコンを付けることになるので、大体引越費用は12〜13万くらいになるのだろう。また次の引越のための、記録。 とにかく、これで引越もひと段落。仕事も明日からが本番となる。これからここでの新生活を、どう日常にしてゆくか。色々考えるけれど、ただひとつ。わかっていること。新しい場所が自分を必要とするかどうか、そんなことはどうでもいい。確実なのは、どんな場所に住むにしろ、その場所に住むことは自分の人生にとって必要なことなのだ、ということ。 どんな土地に住もうが、その土地は自分にとって必要な土地なのだ。これまでを振り返ってみて、自分はそう言いきれる。この土地も必ず、自分にとって必要な土地になる。 さ、新生活。開始。 ■2012/04/28 土 概ね仕事というもので扱う要素は三つある。それは「ヒト」「モノ」「カネ」。例えば人事ならヒト、物流ならモノ、経理ならカネ、になる。自分はこれまでずっと「モノ」専門でやってきたが、今回、新しく「カネ」を扱うことになった。今まで「モノはいいっすよ、蹴飛ばしても文句言わないし」でやっていたモノ屋なので、カネの世界には馴れるまでにはちょっと時間がかかりそう。 けれど、カネとモノというのは密接に繋がる世界でもある。モノをよく知っている、というのは自分の強みでも、あるだろうし。まぁ、何とかなるだろう。 今日から連休に入る。前の職場ではこの時期が繁忙だったので、ゴールデンウィークが普通に連休になるのは3年ぶりのこと。けれど、初日からトラブルが。引越後辺りから携帯電話のキーの反応が鈍く、数字の9とメニューを表示するボタンが効かなくなっていた。それでも電話は数字を打ってかけることもないし、メニューは他から呼び出せるので何とか使えていた。 けれども、調子はどんどん悪くなり、最近は充電している間に電源が勝手に切れ、電源を入れても「時々起動しない」という状態に。そして今日使ってみると数字の3のキーが効かなくなっていた。 問題は、この3という数字が携帯電話の暗証番号に使用している数字だったので、それが押せなくなったことにより、バックアップやリセット、操作ロックの解除、暗証番号の変更などの重要な操作が一切できなくなったこと。ああ、これはまずい、と。近くの駅前の携帯のメーカーのお店に持ち込むことに。 あーすみません、携帯の調子が悪いんで。あとついでに住所変更…と持ち込んだお店には人もおらず、すぐに対応してもらう。お店の方にも難易度が高かったようで、どこかと電話でやり取りしながら色々操作してもらい、データだけはバックアップしてもらう。で、「バックアップはできました。で、どうしましょう」という話になる。お店側のお勧めは、当然修理よりも機種変更。この携帯も3年半使ったものなので、こちらも依存なし。節目だしちょうどいい。機種を変えよう! となる。 「スマートフォンになさいますか?」「ですね、もうそういう時代だし」「希望の機種はありますか?」「いや、今日全く買う予定じゃなかったし」「そう、ですよねぇ」と。どうせこちらも詳しくないので「防水のやつで適当に」と何種類か選んでもらう。 「男性によく出ているモデルはこちらとこちらですね」「こちらとこちらの違いは?」「ええと、こちらは全部操作が画面タッチですけど、こちらにはボタンが…」「じゃあ、ボタンので(ボタンの方が押した感があっていいに違いない)!」「はぁ」という感じで決めてくる。 そうして、携帯のデータをスマートフォンに移してもらい、機種代は分割払いを勧められたにもかかわらず「分割は嫌い」と一括で買い上げ、ついでに住所変更をしてもらって終了。まさか今日、携帯電話をスマートフォンに変えることになるとは。 一応、持ち込んだ携帯電話も、持って帰ってきた。過去の日記を遡ると、2008年11月1日の日記に、この携帯に機種変更したことが書いてあった。お疲れさま。 ■2012/04/29 日 携帯電話を池に落として「あーあ」と思っていると、池から神様みたいな人が出てきて『お前の落とした携帯電話はこのボロボロなやつかね。それともこの最新のスマホかね?』と訊いてきたので「あーこっちの携帯です」と答えると『お前は大変正直な奴じゃ。携帯電話を返してやろう。ついでにこの最新スマホもくれてやろう。防水じゃぞ』というやり取りが先日あって、携帯がスマートフォンになった。 けれど、どうしてスマートフォンなのに、略すとスマフォではなくてスマホなのだろう。まぁどうでもいい。持って帰ってきた前の携帯の方は、今日は電源を何回か入れてみても起動途中で電源が落ちてしまう状態から復帰せず。週末で良かったなぁ、と思う。 今日は午前中に洗濯の後、自転車でちょっとあちこち走ってきた。少し走るとすぐ海に当たるので、船が沢山行き交う東京湾沿いに向かって走る。対岸には房総半島。鋸山辺りが見えている。湾の奥の方には、都内の高層ビルも見えている。海岸は開発された護岸が多いけれど、所々に岩礁や砂浜もあり、もう結構な人出があった。夏には首都圏からの来客で結構混みそうな雰囲気。 途中で湾を横断する渡し舟に乗ってみたり(大人150円+自転車50円)、砂浜に降りてみたり、テトラの上を歩いたり。途中で見つけた見せに寄ったりしながら、今日は半日周辺探索。ポケットの中のスマホは携帯よりもかさばるけれど、ナビのように地図が見られるので初日から大活躍した。しばらくは、地図を見るための道具になりそう。 そういえば、海が自転車で(歩いてでも)行ける身近な範囲内に住むのは地元に住んでた時以来だな、と思う。海自体は珍しくもないけれど、思えば住んでいたのはずっと内陸だったんだな、と。そのうち、釣りでも来てみようか。子供の頃みたいに、自転車に竿くくりつけて。 |