Azure Diary


平成二十四年 水無月



■2012/06/06 水
 午前中は激しい雨。雨だな。ふとそう漏らすと、「6月6日に雨がザーザー降ってきて…」ってくらいですもんね、と返ってくる。何だそれは。知らないですか、アヒルのコックさんですよ。ああ、あれ。棒が一本あったとさ、ね。そうそう。
 という話をしていたら、脇から「6月6日ったら、UFOがあっち行ってこっち行って落っこちて、お池がふたつできる日じゃね?」と。なんですかそれは。知らないの?ドラえもんの絵描き歌…。あーそんなのもあった、と。そんな会話が続く。今日は金環日食に続く天体イベント、金星日面通過の日。
 午後になって雨があがり、13時15分頃。金星の日面通過もそろそろ終わる、というギリギリになって陽が射してくる。日食観察で使ったフィルムの端っこを持ってきていたので、それを持って「それっ」と数人で外へ。取りあえず自分が覗いて見る。「見える?」ああ、何か太陽の端っこに…ゴミのようなものがあるような。と。金星には大変失礼なのだけど、正直な感想。フィルムを渡す。「どれどれ」と覗く相手。えーどこですかね。多分、太陽の2時方向ら辺の端っこにあるやつ。「あーあった。ホントにゴミのような…」と。せっかく終了間際、奇跡的に姿を見せたのに、散々な言われようの金星だった。
 そうして次の一人がフィルムを手に太陽を覗く。が、フィルムを覗く前に太陽を直視したらしく「ああ…残像で何も見えない」と。そんな感じでバタバタっと金星の日面通過は終了した。その日面通過、次は105年後だという。


■2012/06/09 土
 関東地方は本日から梅雨入りした模様。今日は一日小雨。
 この街は、駅や大きなスーパー、郵便局などが大体歩いて行ける範囲に纏まっている。郊外には大きなホームセンターがあるので、車があればやや便利、というくらい。歩いて行ける範囲には、支館ではあるものの図書館があるので、今日はじめて行ってみた。梅雨のはじめの雨の中、歩いて行ってみるとそこそこの規模の図書館。貸出カードの登録をして、2冊の本を借りてくる。これでこれまで一体、いくつの街の図書館に登録したのだろう。考えてみると、どこも登録抹消の手続きをしていない。そういえば。
 駅前の商店街を歩いていたら、衣料品のお店の前で、以前埼玉にいた頃まで使っていたのと同じ、骨の数が多い蛇の目柄の傘を見つける。それは展示品だったけれど、売り物として同じのがないか、と訊ねると、今は製造されていない、とのこと。なかなか頑丈で良かったので、展示品でいいので売ってくれるかどうか訊いてみると、展示品で長く使っていたもので、多少色褪せもあるけれど、それでもよければ、と。では是非。そうして500円で売ってもらう。
 そうして傘を一本さして、一本手に持ってまた歩き出す。駅の混み混みした辺りからちょっと外れたところにカフェを見つけたので、そこに入ってみる。雑貨の販売もしているこじんまりとした、けれど綺麗なお店。いつ見ても混雑している駅前のチェーンのカフェとは違い、空いているので一番奥の席で、借りてきた本を一冊、読み切る。

 そんな梅雨の初日。


■2012/06/20 水
 先日、台風が通過したが、自販機脇のゴミ箱の蓋が無くなったり、火気厳禁やらの標識が飛んだりしたくらいで特に被害はない。仕事に関して言えば、こういう時。前の職場ならバタバタしていたけれど、こちらでは心配するのは、とりあえず自分の周辺のみ。前の仕事はいわゆる「中央の仕事」であり、守備範囲は広いが地域とは密接ではなく。反対にこちらは、場所は同じ関東とはいえ「地方の仕事」になり、守備範囲は狭いが地域と密接している。そんな感じになる。
 と、被害はなかったのだけど、台風一過の後。風が直撃するベランダの窓は薄っすらと白く潮が吹いていた。そして、駐車場の車もまた。自分の車はシルバーなので潮を被っても目立たないのだけど(むしろ、そのためのシルバー)、周りの黒系の車を見るとかなり白くなっている。車にはちょっと厳しい環境のよう。
 車は現在、車体下のデファレンシャルギアのボックス辺りから少し油が漏れており、駐車場の地面にシミを作っている。それを週末修理に出す予定なので、ついでに洗車してもらおう。

 台風はここを過ぎてから、結局北海道には辿り着くことなく温帯低気圧となり、海上に逸れていった。いつも北上する台風の進路を見て思うのだけど、日本にやってくる台風というのはひょっとしたら、目指しているのは北海道なのかも知れない。台風にとって北海道とは「たけし城」のようなもので、理由はわからないが、台風は北海道を目指して次々と日本に押し寄せる。けれど、南国生まれの台風にとってその北上する道のりは険しく。やってきては斃れ、またやってきては斃れしてゆく。そんな気がする。
 そうして様々な難関を乗り越え、北海道に辿り着ける台風は、多くても年間で数個。一体、北海道の何が、彼らを惹きつけてやまないのか。斃れても斃れてもなお、諦めずに続々と北へと進路をとる、台風たちの姿。想像するとやはり、たけし城。懐かしいな。


■2012/06/30 土
 人は物事を白と黒、という例えで両極にわけてしまいがちだけど、その白と黒、というのは、どの程度の白と黒、なのだろう。自分は簡単に、それが白だ黒だとは、言えない。それが本当に白だ、黒だ、といえるものなら、その世界に人は存在し得ない。人が存在し得るのは、その白と黒の間に存在する、幅広い灰色の領域。限りなく黒に近い灰色から、限りなく白に近い灰色至る、幅の中だけ、なのだと。

 違いの中にいるわけではない。幅の中にいるだけなのだ。人間という存在は。

 そんなことを想いながら帰り道、街中を歩いた日。歩いたのは、東京都港区六本木。これまで近くに来たとことはあっても、それはいつも首都高の高架の上、だったので、歩くのは初めての街。大きなビル…六本木ヒルズ、というランドマークがあるので、迷うことはないだろう、と思ったけれど、大きなビルというのは、意外と近くに行くと見えなくなるもので。やはり嵌まり込む袋小路。初めて歩く街、というのは、いつも。よくわかんないけれど、こっちの方向行けばここに出るはず、と歩くと、大抵予想外の方に出てしまう。けれど、それもまた。

 こっちに歩けば駅に違いない。と、てくてく。着いた駅は恵比寿。さて、帰ろう。ありがとう。水無月の終わりは、いい一日でした。


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