Azure Diary


平成二十四年 葉月



■2012/08/11 土
 ペルセウス座流星群の極大は明日の夜。明日は日曜、明後日もその次の日も休みである。リュックと靴。足首に砂が入らないようにするための靴カバーを準備する。スマートフォンの予備バッテリーパックをフル充電する。引っ越しから箱詰めしたままの冬物衣料と雨具を取り出す。常時パッキングしてある医療品などのキット。ヘッドライト、LED懐中電灯の類の電池を交換する。
 シャツ類、医療品、雨具はリュックへ。背負いバンドに電話とカメラ、LEDライトを装着する。折りたたみ椅子と折りたたみ座布団(クッション)は隙間に差し込む。防寒衣料のジャンパー上下とフリース一枚は、リュックには入り切らないので、ナップサックに入れてリュックの背面に縛着する。そうして、買ってきた300mlのパック入り飲料を4本、冷凍庫で冷凍しておいた。

 そんなことをしながら寝る時間を遅くして、明日は13時に起きる。そして、準備したものを持って流星群を見に行く。行先は、そう。富士山。どうせ見るなら日本一星空に近いところで。


■2012/08/12 日 〜2012/08/13 月
 富士山は五回目、単独では昨夏に続き三回目、となる。昨夏は山頂郵便局から暑中見舞いを出しに。今年は流星群を見に。思えば、最近の自分の富士山行き、富士山がメインになっていないような気がする。
 15時頃に出て、16時過ぎくらいに高速を降りて、買い物をして、五合目へのシャトルバスが出る臨時駐車場へ。17時半のバスに乗って、18時には五合目に到着。と、思ったよりスムーズに。普段は4時間ちょっとで登ってしまうのだけど、今回は空を見ながら、なので早めにスタートしてゆっくりと。19時頃に森林地帯を突破、その辺りで雲を抜けて、ぱっとしなかった空も晴れになる。以下、記録によると、20時30分頃に本六合目、富士急ハイランドの花火を見下ろしながら歩いて21時45分頃に七合目、本八合目で日付が変わり、1時頃に山頂に到着、というペース。
 以前も一度、この流星の時期に登ったのだけど、あれはたまたまだった。今回、極大を狙って見た流星は、よかった。夜空ばっかり見て歩いている訳ではないのだけど、視界に入っている空の片隅をちらり、ちらり、と星が過る。ずっと空に目を凝らしていると、数分に一個は流れるペース。星はそれこそ放射点から四方八方に。小さく短いものもあれば、まるで衛星が突入する映像のように、煙を吐きながら眩しく落ちてくるものまで。山頂に着いても2時間くらい、山小屋の横の壁を背もたれにして、折りたたみ椅子に座って眺めていた。ものすごい数の星空の中に、ものすごい数の星が流れた。言えるのはただ、それだけ。祈りや願い、というのも無いことも無いが。まぁ。そういうものは別に、人に見せるものでもない。

 ご来光を、今までの日の出側斜面ではなく、最高峰の碑がある真の最高地点で見よう、と。空が明るくなってきてから移動する。そうして、富士山頂の三角点の上で日の出を待っていた(三角点の脇に「日本最高地点の碑」があり、人は皆そちらに集中するので、三角点そのものは特に見向きされない)。ただ、風があり。山腹の斜面を上がってきた風が上昇気流となり、山頂付近で次々と雲が発生し続けている状況。なので、今回は初めて、山頂からのご来光は拝めず。視界が無かったので、火口の風景や山頂からの風景、影富士なども、今回はなし。メインイベントの流星群も夜なので、今回は特に「これ」といった写真を撮っていない。
 そうして、雲の中の山頂を早々に後にして、登山の目的は下山すること、と。とっとこ降りて帰ってきた。後は昨年と同じく温泉に入って、寄り道をして。土砂降りの雨と渋滞に巻き込まれながら帰宅。と、もう五回目なので淡々と書いてしまったが、いい星空でした。


■2012/08/16 木
 スマートフォンには歩数計がついていて、前に駆け足の時にどのくらいの歩数になるのだろう、と思ってその機能をONにしてそのままだったので、富士山での歩数も記録されていた。山でスマートフォンは腰にではなく、リュックの肩バンド部分に取り付けていたので、どの程度正確かはわからないのだけど、12日の登り八合目辺りまでの歩数が13,747歩、13日の八合目からの登り〜下山、帰宅までが20,752歩、と記録されていた。しかし、12日の消費カロリーは155.2kcal。13日は503.6kcal。カップヌードル1コ、360kcal。あんだけ歩いてもカップヌードル2個もカロリー消費しないんだなぁ、と。
 と、12日13日とそれだけ歩いたのだけど、翌14日の歩数は、8歩と記録されていた。消費カロリー、ゼロ。


■2012/08/26 日
 先日、夕陽の時刻に海岸を走っていたら、ちょうど富士山の裾野に沈む夕陽が見えた。これはちょっと北上したらダイヤモンド富士になるのでは、と。今日はちょっと北の海岸へ。この辺りの海岸はなかなか車で入り込む余地がないのだけど、さすがにもう4カ月暮らしているので、そういう海岸はもう何箇所か開拓してある。今日は川と川に挟まれた、延長100メートルほどの、猫の額のような砂浜へ。
 夕陽は着実に富士山頂に向かって降りてくる。人は先ほどまでひと家族いるだけだったけれど、夕陽の時間が近くなると5、6人増えてきた。三脚を立てている人もいる。ダイヤモンド富士狙いだろうか、と、その中のひとり。首から遮光グラスをかけて、時々それで太陽を覗いていたおじさんに訊いてみると、やはりそうだという。「昨日はそっち(200メートルほど南)で、今日はここ」と。開いて見せてくれたファイルには、「何月何日はどこどこでダイヤモンド富士」というのが細かくマッピングされた地図と、各所で撮ってきた写真。本格的な追っかけの方だった。個人的に師匠とお呼びすることにして、色々と教えてもらう。
 ダイヤモンド富士は富士山麓に居る時には何度も見ていたけれど、遠くの富士で見るのは初めて。近くにいるとその有難みがわからないもので、そういえば写真を撮ったこともない。で、コツを教えてもらう。
 師匠曰く。写真を撮るなら手に持って撮るのではなく、三脚かどこかに置いて撮らないとだめ。そうして光学最大ズームで(その方も自分もコンパクトカメラ)カメラを富士山方面に固定したら、あとは沈む瞬間、あっという間に沈んでしまうので、とにかくシャッターを押しまくる。構図は気にしない。大きく撮って後でトリミングすればよし。携帯で撮ろうなんて思ったらだめ。そんな余裕はない。などなど。
 自分はミニ三脚なので、近くの丸太の上にカメラを置いて、「こんなもんですかね」「あーそれなら多分大丈夫!」そうして撮れた写真が、これ。この間、10秒くらいのもの。








 師匠、撮れました!どうでしょう。「おお、いい感じですねー」と。師匠は「明日はまた向こうへ…」と言い残して茜に染まる海岸をシルエットになって去ってゆく。
 夕陽はすっかり富士山の影に入り。夕暮れ。こちらも帰ろうとすると、波打ち際で犬を連れた女性が富士山を眺めていたので、また立ち話。すると「わたし、明後日あそこに登るんですよ!」と。ほう。しかも齢50歳にして単独で、という。ああ、わたしも12日13日で登ってきたんですよ! ええ、そうなんですか!と。それから延々と、ふて寝してしまった犬をそっちのけで、黄昏過ぎるまで富士山話。
 今夏、富士登山に行ったけれど、パーティーの他のメンバーのダウンで山頂までは行けなかったので、単独での再チャレンジ、とのこと。どこから登るかを決めかねていたけれど、自分が登った話を聞いて関心を持っていただいたようで、じゃあ同じ所から登ってみます! と。浜辺で出会った山ガール様。グッドラック。


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