Azure Diary


平成二十四年 師走


■2012/12/17 月
 例えば、ある政党が選挙活動のスローガンとして「反原発」を掲げたとする。けれど、個人的には「反原発」というのは立場であり、目的ではない、と思う。
 立場の表明、は、選挙活動で掲げるスローガンとしてはどうなのだろう。スローガンとして掲げるのならそれは、将来どうするか、どうしたいのか。ということ。つまり「原発反対」ではなく「原発廃止」という、具体的な「目的」ではなかったのかな、と思う。
 先日行われた衆院選の結果、「反原発」を正面に掲げた政党は振るわなかった。個人的には、今すぐにであれ、将来的に、であれ、原発は必要ない、とする人は多かったはず。しかし、議席には結びつかなかった。それは多分、信念、というほどでもないけれど、原発はいらないよなぁ、という層を、そうした政党が取りこめなかった、ということになり、その原因が何となく、先のスローガン。「反原発」という立場、を、正面に掲げてしまったことに、あるような気がする。
 「原発に反対」というのは、わかりやすいけれども、選挙活動においてそれを掲げることにはリスクがある。まず「原発に反対」というためには、暗に「原発の推進(維持)」が主流であることを認める、という立場でなければならない。「反対」という立場は、対立する相手があってはじめて成り立つものに、過ぎないから。
 それと、「原発に反対」をスローガンとしてしまうと、その政党の目的。目指す方向が、曖昧になってしまう。または、異なる意味で取られてしまう可能性がある、ということ。つまり。「原発を廃止」することではなく「原発に反対」することが、その政党の目的なのではないか。という印象を、予備知識なくそのスローガンに触れた相手に、抱かせてしまう怖れがあること。
 それがなぜマイナス要因になるか、というと。原発問題以前に「○○に反対」という政治活動は過去に無数に存在し。それは時折、反対することが目的の政治活動…反対のための運動、になってしまった、という。そういう例がたくさんあるからで。「○○に反対」というスローガンに対し、それと似た雰囲気を感じてしまい、反射的に拒否反応を示してしまった有権者、というのも、少なくはなかったと思う。これは選挙だけではなく、それ以前に行われた反原発デモにおいてあげられていた「原発反対」コールが連呼される光景に対しても、ふと思ったこと、でもある。

 「反原発」と「原発廃止」は、思想的には同じように見えても、異なるもの。先に書いたとおり、前者は「立場」であり、後者は「目的」。今すぐにでも、あるいは将来的に原発が不要だと考えるなら。訴えるべきは「反原発」ではなくやはり「原発廃止」であり、その違いにはもっと、こだわる必要があったのかも知れない。
 ただ、そんなこと言葉の上の問題に過ぎないのだから、もっとよく勉強すれば。公約を深く読み込めば言いたいことは同じだと、わかるもの。とも言えるのだけど。選挙というのは、そうあるべきなのだけど、実質はそうではない。大概は「イメージ戦略」。「将来、それを、どうしたいのか」という。その点がスローガンからイメージとして読み取れないと、熱心な支持者以外の票というのはやはり、集まらないものだと思う。

 今回の選挙活動にしても。繰り返されたデモにしても。訴えるべきことは「原発反対」ではなく「原発廃止」ではなかったのか。そして、呼ばれるべきは、そして自称すべきは「反原発派」ではなく、「原発廃止派」では、なかったのか。その違いにはもっと、こだわる必要が、あったんじゃないかな、と。争点のひとつ原発について、そんなことを感じた総選挙。ひとは政党や候補者の立場に投票するのではない。政党や候補者の目的に対して、投票するもの、なのだ。


■2012/12/24 月

 2006年、山口県の阿知須(車中泊)
 2007年、長崎県の生月島(車中泊)
 2008年、北海道(実家)
 2009年、広島県尾道(運転中)
 2010年、千葉県(民宿)
 2011年、埼玉県(自宅)
 2012年、東京都(東京タワー)

 上が、北海道から本州に渡ってから、どこでその年の元旦を迎えたか、の履歴になる。ここまで全く重複がない、というのもさすが自分だが、今年は実家で年を越す予定なので、4年ぶり2回目、になるのはもう確定。

 実は。昨日から29日まで、JR東日本とJR北海道、いわて銀河鉄道、青い森鉄道の普通列車が乗り放題になっている。それは先日買った「北海道・東日本パス」のおかげ。上記の路線の普通列車が連続7日間乗り放題で10,000円、というもの。昨日からそれを使えるようにしたので、昨日はそれで都内を巡ってきた。予行練習である。
 今日は大掃除をして、実家に送るものを送って、なるべく身軽にした荷物をリュックに詰める。今年は帰省して年越し、になるが、今回の飛行機は帰りの2日の便だけ取ってある。行きはどうするか。飛行機、車、船は体験済みなので違う手段で。だから、そう。普通列車で帰る。10,000円だし。行程はまだいまいち決まっていない。が、宇都宮、郡山、福島、仙台、盛岡、八戸、青森、函館…と繋いで行けば行けるのだろう。

 予定は2泊3日。明日、出発。では、今年はこれで。メリークリスマス。よいお年を。



(追記:2012年末列車の旅の記録)

■2012/12/25 火
 北海道から本州に渡ってきて、当初行きたいと思っていた所には、もう大体行ったさ。けれど、それはいつも車で自分ひとりで運転して、だったから。運んでもらう旅、誰かに運ばれてゆく旅、ってのを、やってみたかったんだ。まぁ、旅ってほどのものではないけどね。つまりは、そういうわけなのさ。

 というわけで、「北海道&東日本パス」を手に、まだ暗い中、5時台のJR線の始発に乗車。大船駅に向かう。大船駅からの行動は以下のとおり(記載の時刻は時刻表のまま。実際には多少の遅れあり。なお、経路・時刻の検索は電池節約の意味でもスマホは使用せず、ポケット時刻表を使用)。荷物はリュックひとつにまとめた。

○06:30大船駅発 湘南新宿ライン、宇都宮行き。乗車時間約2時間45分。
 大船駅ではずっとドアが開きっ放しで停車していたので、寒い。ドア脇には開閉ボタンがあるけれど、この辺りでは使用不可。平日なので都内では普通の通勤電車となり混雑。都心を過ぎるとがらっと人がいなくなり、宇都宮までうとうと。

○09:15宇都宮駅着 乗り換え。
 起きたらもう駅についていて車内に誰もいなかった。そのまま寝ていたら折り返してまた大船方面になる。危ない危ない。わたわたと乗り換えのホームへ移動。

○09:34宇都宮駅発 東北本線黒磯行き。乗車時間約50分
 やっとドアがボタンで開閉できるようになったので車内はぬくぬく。今回は始発から終点までずっと乗っているパターンが殆どなので、一本あたりの乗車時間は長い。なのでその時間に、次の列車を時刻表で探す、という感じで進行。
 初日は花巻以南で一泊する予定。というのは、花巻にある宮沢賢治記念館に寄り道して行こう、と先日決めていたから。

○10:25黒磯駅着 乗り換え。
 栃木県。あまり時間がないので、売店のレモン牛乳関連商品を横目に乗り換えのホームへ。

○10:33黒磯駅発 東北本線郡山行き。乗車時間1時間少々
 順調。ちょうど昼ごろに郡山着なので、郡山で一旦降りてごはんにすることに。

○11:37郡山駅着 改札を出てお昼やすみ。


 郡山は仕事で何度か来ているが、いつも車での直接移動だったので、駅前は初めて歩く。
 途中、地元の方から「駅前で昼食なら『珈琲館』で」とおすすめをいただいたので探してみる。店はしばらくして見つかったのだけど、残念ながら定休日だった。


 駅前のラーメン屋さんで「まぜそば」で昼食にする。そのお店の中で時刻表を見ながら出発時間を決める。それからまた駅前をうろうろ。そうして1時間半ほど郡山に滞在の後、出発。

○13:40郡山駅発 東北本線福島行き。乗車時間約45分
 今日の宿泊場所を、この先の乗り換え駅を基準に選んでゆくと、仙台、小牛田(※この時点では「こうしだ」と読んでいる)、一ノ関のどこかになるか。一ノ関までは夜7時までに行けそうだけど、列車の運行状況もあるので、今後の展開次第。もう少し後で決めよう。

○14:26福島駅着 乗り換え待ち。
 次の列車まで40分くらい時間があるので、改札を出る。列車の運行は、日本海側は荒れているが東北本線は順調そうなので、初日は一ノ関まで移動に決定。待ち時間中に宿探しと予約を済ませる。

○15:05福島駅発 東北本線仙台行き。乗車時間1時間20分。
 列車には早めに乗りこんだので、2席向かい合わせ4人掛けのボックスシートにひとり座っていた。やがて徐々に人が増えてきて、席が埋まってゆく。そのうち自分の向かいにも「ここ空いてますか」と荷物をたくさん持った女性が来たので、どうぞどうぞ、と伸ばした足を引っ込める。
 彼女はカラカラ(※個人的にキャリーバッグのことをこう呼んでいる)を引っ張っていたので「帰省ですか」と訊くとそうだという。「どちらまで?」 「岩手です。そちらも帰省ですか?」 「ええ、まぁ」 「どちらまでですか?」 「…北海道」 「え!?」
 彼女は18きっぷで岩手まで自分と同じ県内から帰省、とのこと。こちらはこれ、こんな切符でさぁ、と。互いの切符を見せ合って、それからずっとおしゃべりしながら仙台まで。

 「仙台…ずんだ餅買おうかな」
 「あ、いいね。でも乗り換えが…15分だな」
 「でも確か、改札を出てすぐのところにお店があったはず!」
 「なに、それは買わねば!」

○16:26仙台駅着 乗り換え。
 短い乗り換え時間で改札を出て、本当にすぐの所にあったお店でずんだ餅を買い、戻ったホームで彼女と再会。そういえば、この先どうせ乗ってゆく列車は同じ(選択の余地がない。)になるので「また知らない人と相席になるよりは」ということで、この先も組むことに。まぁ、知らない人であることには変わりないのだけど。旅は道づれ。
 彼女はずんだ餅を買う余裕は無かったとのこと。「どうせまた相席なら、一人はすぐ次の列車に席取りに行って、もう一人がずんだ餅買う、って連携プレーができたな」 「あ、その手が…」 「まぁ初対面だから仕方ない。次に反映しよう」

○16:41仙台駅発 東北本線小牛田行き。乗車時間約45分
 「次の駅(小牛田)って『こうしだ』でいいの?」
 「え。コゴタ、ですよ」
 「コ…ボタ?」
 「コ・ゴ・タ。ゴですよ」
 「ゴ?これって牛じゃなくて、午前の午か(時刻表)?」
 「あれ、どうだろう。字が小さくて…あ、ウシですね(時刻表)」
 「ウシ…だよな。難易度高いな」
 「地名って、読めないですよね」

 ここまでずっと色々な話をしながら。手袋は「履く」が標準語なのだ、という話をしたり、アイスクリームラーメンの話をしたり。「混んでるんだから荷物置かないの!」とボックスシートで更に相席になった知らぬオバちゃんに共に文句言われたり。音楽の話をしたり、旅の話をしたり。震災の話をしたり。雪国のカラカラにはオプションで車輪の所にスキーが付く、という話をしたり。すずめの話をしたり。そんなこんなで、あっという間にコゴタ。

○17:25小牛田駅着 乗り換え。
 すっかり夜になったホームを乗り換え列車へ。それっ席取り席取り。空いてるかな。あれ結構人がいる。どうせみんな手前から乗るから、後ろの車両いこう、と。なかなか息の合ったコンビになってきた。そうして後ろの車両のボタンを押してドアを開け、乗りこむと上手い具合に空席。網棚へ上げるのに彼女の荷物を受け取ると、サイズの割に思いのほか軽い。「なにコレ」 「三味線です」

○17:37小牛田駅発 東北本線一ノ関行き。乗車時間約50分
 引き続きおしゃべりしながら。都会と田舎の、時間の流れの違い。そんな話をする。
 「何ていうか、盛岡過ぎると…時間の流れが変わるんですよ」
 その感覚、わかる。首都圏に来てからは、特に。曇り窓を拭って見る外の景色が次第に雪景色になってゆく。そしてまた、話をしてるうちあっという間に一ノ関。
 時間の流れが変わる、か。乗車時間50分も、一人だと本当はもっと、長く感じたんだろうな、と。そんなことを、ふと想う。

○18:24一ノ関駅着
 今日の移動はここまで。彼女はここで乗り換え、更に北へ向かう。風と共に雪が吹きこむ冬のホーム。「また、どこかで」 ああ、会えたらいいな、と。振り返ってバイバイと手を振る。そうして彼女は乗り継ぎの列車へ、自分は改札口へと。
 改札を抜けると、降りしきる大粒の雪。出てきたホームの方を見ると、彼女の乗った盛岡行きの列車。どこに乗っているかはわからないけれど、少し待ち。やがて走り出した列車を見送ってから歩き出す。ふふ。寝ちゃわないようにね。
 駅前も雪景色。そういえば今日はクリスマスだった。久々の、ホワイトクリスマス。


 予約したホテルまで駅から5分ほど。チェックインして、それから外へ出て再び駅近くまで戻り晩御飯のお店探し。駅前の「レストランにんじん」さんで夕食。ホテルに戻ってお風呂に入ってから、明日の行動予定を立てる。
 明日の予定は、宮沢賢治記念館。開館は8時半なので、朝イチで行動してちょうどよいくらい。ただ、最寄駅は東北本線花巻駅ではなく、そこから釜石線に乗り換えて二駅の新花巻駅。けれどJRの接続が悪く、更に新花巻からでも2キロほどの距離があるので、列車+徒歩だとかなりタイムロス。花巻駅からバスくらいあるだろう。と、そんなことを仙台駅で買ったずんだ餅を食べながら。

 そんなこんなで、初日を終える。今日は本当に彼女との出会いに感謝。福島からは本当にあっという間、楽しい時間だった。クリスマスに出逢った素敵な旅の道連れさんへ。ありがとう。またどこかで。


■2012/12/26 水
 昨夜勢いよく降っていた雪も弱まり、銀世界の中を駅へ向かう。
 今日は、この旅唯一の予定である、宮沢賢治記念館へ。

○07:45一ノ関駅発 東北本線盛岡行きを花巻まで。乗車時間50分。
○08:35花巻駅着。途中下車。

 こちらも銀世界。というより、吹雪に近い状態。観光案内所があったけれど、まだオープンしていなかったので、バス停の表示を頼りに路線を調べ、バス待ち。やがてやってきたバスで宮沢賢治記念館へ向かう。

 バスは雪の街中を行く。駅から乗った時点で乗客は自分のみ。途中、バス停を少し過ぎたところで、歩道が雪なので車道を歩いていたオバちゃんが、バスに向かって手を上げる。バスがそれを見つけて停まり、ドアを開ける。まるでタクシーみたい。あまりバス停は関係ないみたいだ。
 少し街を離れた宮沢賢治記念館口、というバス停で降りる。案内板らしいものは雪に覆われて見えないけれど、多分あっちがそうだろう、と、それらしい上り坂の道を登ってゆく。
 靴は富士登山にも履いてゆく踝まで丈のある靴だったけれど、それでもすっぽり埋まってしまうくらいの積雪なので、車のタイヤの跡を辿って歩いてゆく。道沿いの木々の枝に積もった雪の塊が時折、空中で砕けながらトサッ、トサッ、と落ちてくる。そんな中を雪ニモマケズと結構登り、10分ほど歩いてようやく記念館着。思ったよりハード。


 記念館入口。石碑のようなものは、よだかの星の彫刻碑。でも雪で肝心なところがよく判らなかった。左手に併設施設のイーハトーブ館に至る遊歩道があって、途中に宮沢賢治設計の花壇もあったりするらしいが、除雪が済んでいなかったので進入できず。そのまま記念館へ(館内は撮影禁止)。
 自分以外はカップルひと組だけ、という、貸し切り状態で見学。あちこちにある「押すと説明が流れるボタン」も押しまくる。けれど、時間の都合で全部押し切ることはできなかった。館内くまなく見てボタンも全部押して、流れる説明を全て聞くなら3時間は必要か。
 館内でよかったのは、賢治作品に登場する鉱物の解説の展示。詳細は省くが、貝の火、って、貝の化石が宝石化した「貝オパール」がモチーフだったんだなぁ、などなど。

 館と併設して、レストラン「山猫軒」があった。つまり、注文の多い料理店。客に対して注文が多い、という、あれだな。猫が持っている営業中の看板には『どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません…』と書いてある。これは行くしかあるまい。

 メニューに鹿踊り蕎麦、というのがあったので、温かいお蕎麦だ!とメニューを指しながら「えーと、この『しかおどりそば』…」と注文したら「はい『ししおどりそば』ですね」と。特に注文が多いということはなかったが、注文は訂正された。鹿肉入りのお蕎麦だそう。その後、店内のお土産物屋で、リュックに納めやすいパック入りの「金婚漬」という漬物を実家へのお土産に買う。この辺りの特産だそう。

 そうして(命からがら)山猫軒を後に、坂を下りてバス停へ。除雪もさほど進んでおらず、途中にあった懐かしいポストもこんな感じに雪帽子。

 このくらいの雪なのでバス停も雪に埋もれており、車道でバスを待つ。やがてやってきたバスに乗って花巻駅へ。バスはかなり遅れたので、駅に着いた時点で結構いい時間に。記念館で昼食にしておいて正解だった。

○12:30花巻駅発 東北本線盛岡行き。乗車時間40分少々。
 定刻からどんどん遅れてゆくけれど、盛岡駅で1時間近く待ち時間があるので影響はない。それにしても、どんどん遅れてゆくのに、特に車内アナウンスなどはない。「盛岡過ぎると時間の流れが変わるんですよ」 か。ここら辺りももう既に、そんな時間が流れているよう。

○13:12盛岡駅着 乗り換え待ち。
 駅構内に「鹿踊り」の人形(衣装?)が飾られていた。これがそうか。確かに「しし」だ。

 改札を出て駅周辺をぷらっと。お昼は食べたばかりなので、盛岡三大麺(冷麺、じゃじゃ麺、わんこそば)は素通り。そういえば、何時だったろう。就職したばかりの頃「盛岡で冷麺喰うぞ」と職場の仲間と車で、フェリーで海峡渡って盛岡まで来て、冷麺食べて石割桜見て帰ったことがあった。あの時以来の盛岡駅前だ。懐かしい。
 交通は順調そうなので、今日は青森泊に確定。宿探しと予約をする。駅近くの天然温泉施設併設のビジネスホテルにする。温泉と朝食バイキング付きで4千円台。今までの車中泊の旅とは比較にならない豪華さ。

○14:05盛岡駅発 いわて銀河鉄道八戸行き。乗車時間1時間50分。
 宮沢賢治記念館の後に銀河鉄道という豪華な組み合わせの車内で、持参した銀河鉄道の夜を読んでみたり。この「いわて銀河鉄道」と、次の「青い森鉄道」は、今回使っている「北海道&東日本パス」では全線乗車可能だが、18きっぷでは「青い森鉄道」の一部しか乗れないそう。なので、18きっぷで青森へ行くには奥羽本線で、ちょっと遠回りになるらしい。

○15:54八戸駅着 乗り換え。
 「いわて銀河鉄道」の駅から乗ったはずなのだけど、降りたのは「青い森鉄道」の駅だった。第三セクターなので、県境で経営が変わっていた模様。列車の到着は遅れたけれど、次の列車もこの列車の到着待ちをしていたので、乗り継ぎには影響なし。

○16:10八戸駅発 青い森鉄道青森行き。乗車時間1時間40分。
 盛岡から八戸間、八戸から青森間、共に2時間近い乗車時間の連続になる。昨日はおしゃべりしながらあっという間だっただけに、今日はとにかく、暇。列車はまた次第次第に遅れてゆくけれど、やはり特にアナウンスなどはなく。時間はのんびり流れてゆく。
 北国の列車は、車内はあたたかいのだけど、そのせいで窓は曇っており、意外と外の景色は見えない。列車は空いている。曇り窓には自分や他の乗客が所々拭ったところがあり、そこからだけ、外の景色が見える。

 乗客の拭ったところが窓になる。昨日からずっと、そんな感じ。

○17:42青森駅着 遅れたので実際の到着は17:50過ぎ。
 チェックイン後、久しぶりの青森駅前(2007年ゴールデンウィークの桜追撃ドライブ以来。2010年はフェリーだったので駅前は素通り)なので、駅周辺をうろうろ。そしてこちらも久々のツルツル路面。でも、歩き方は体が何となく憶えているもの。掲示板によると気温はマイナス7度。青森県観光物産館「アスパム」へ行ったけれど、中のお店は殆ど閉店していて空振り。

 ひと巡りして駅前で夕食食べていたら、実家から「南部せんべい」との指令。リュックなので割れ物は避けていたのだけど…と思いつつも、駅中で買ってホテルに戻る。

 温泉後、明日の行動予定を組む。いよいよ津軽海峡を渡る、のだが。時刻表を見て行程を組んでみると、普通列車で最速で行けるパターンは、下の1パターンのみ。

 08:05青森駅発 → 08:43蟹田駅着
 08:51蟹田駅発 → 青函トンネル → 09:47木古内駅着
 (この間は普通列車が走っていないので、特例で普通乗車券で特急に乗れる)
 12:26木古内駅発 → 13:35函館駅着

 木古内で2時間半以上待ち…だと。これではあまりにタイムロスが大きいうえ、冬の木古内で2時間半も時間を潰す自信もない(夏なら海まで行ったりするけど…)ので、木古内から函館までバスでもないか、と探してみたりしたがぱっとせず。
 ただ、今回使っている北海道&東日本パスは、特急自由席1,680円を買えば青森から函館まで特急に乗車できるので、ここは大人しく函館まで特急で行くことに。


■2012/12/27 木
 夜の間に雪が積もって、街の人々が雪かきする道を駅へと向かう。青森駅は雪の中。特急券を買って、ホームへ。

○08:24青森駅発 津軽海峡線・特急白鳥 乗車時間2時間。
 2007年のドライブで本州側の「青函トンネル入口」に立ち寄った。そこは公園になっていて、そこで北海道へ向かう列車がトンネルに入ってゆくのを、待って眺めたんだった。今度は是非その列車の中からその公園を見てみたい、と。わざわざそちら側(左側)の窓際に座っていた。
 そしていよいよ青函トンネル(そこまでに何度かトンネルに入るので、よくだまされる)、という瞬間。雪景色になっていたけれど、その公園が。

 ああ、前はあそこら辺からトンネルに入る列車を見たんだよなぁ。と。思う間もなく、列車は長い長いトンネルへ。(2007年の日記はこちら >>桜前線追いかける旅の記録(中編)

 高校の修学旅行以来の青函トンネル。そして、海峡の長いトンネルを抜けると、そこもまた雪国だった。北海道上陸。木古内辺りで乗っていた路線に並走して「北海道新幹線」の高架が建設中だった。

○10:26函館駅着 10分ほど遅れて10:35分頃に到着。乗り換え。
 乗り換えがホームの端から端への移動になる。急げー。乗り遅れたら次は2時間待ち。乗り継ぎの連接が一番厳しいのはやはり、地元北海道で。どれか一本逃すと次は標準で1〜2時間以上待つことになる。ミスは許されない。せっかく特急で函館に来たのに、ラッキーピエロにも寄れないなぁ。次の森駅での待ち時間が長いので、いかめしでも食べよう。

○10:45函館駅発 函館本線森行き 乗車時間1時間20分。
 北海道に入ったので、ここからは「列車」や「電車」ではなく、地元の慣習に倣い「汽車」と呼称する。当然、電車ではないし、電線すらない。私鉄が無いので普通は「JR」とも呼ばない。ただ「汽車(機車)」である。

 この汽車もディーゼル機関車(東北本線にもディーゼル車はいたけれど)。自分にとって駅とはディーゼル車が停車中もアイドリングしているのが普通だったせいか、電車しかいない首都圏の駅のホームの第一印象がそういえば『静かだなぁ』だったなぁ、と。

  ○12:06森駅着



 乗り継ぎまで1時間以上あるので、いかめしを買って駅前のラーメン屋に持ち込む。お店の方に「ここでいかめし食べていい?」とOKを貰って、頼んだラーメンと一緒に「いかめしラーメン定食」にして食べる。だって駅で食べるの寒いんだもん。写真だと見づらいけれど、表示されている気温はマイナス5度。

○13:29森駅発 函館本線長万部行き 乗車時間約1時間15分。
 ふと外を見て、そういえば窓の曇りがなくなっているな、と気付く。それは、北海道の車両は窓が二重窓になっているため。

 汽車はひたすら噴火湾沿いの海岸線を走る。けれど、晴れていればよく見えるはずの対岸も、吹雪模様なので見ることができない。ただただ真っ白な、単調な景色。加えて車内のポカポカさと、座席から伝わるディーゼル車の独特の振動が眠気を誘ってうとうと。

○14:47長万部駅着
 そうして寝ている間に長万部着。改札を抜ける時間は無かったので探せなかったけれど、ホームに「まんべくん」は、いなかった。

○14:56長万部駅発 室蘭本線東室蘭行き 乗車時間約2時間
 汽車以外の陸路でのアクセスができない秘境駅として一部有名な小幌駅に停車した際、一眼レフのカメラを出して熱心にあちこち撮っている人がいた。聞くと、年末年始の休みを利用して18きっぷの旅をしている東京の方。「ここは絶対外せないですよね!」と。つられて自分もついつい写真を撮る。

 東京から来て、青森を拠点に周辺のローカル線を色々と乗車して。そして北海道に上陸して札幌まで。そうして札幌で折り返して帰るのだそう。こちらには疎いそうなので「後で通る北舟岡駅もいいよ。日本一(多分)ホームが海に近い駅だよ」と。そんな会話をしながら。
 ただ、札幌方面荒れてるかもねぇ。この辺りは単線。雪の影響で対向してくる特急や貨物列車に遅れが出ているとのことで、途中駅での通過待ちの時間が多くなっている。

 小幌の次の礼文駅では、対向する特急が来るまで20分以上の通過待ち。暇なので運転手さんに「ホームで煙草吸っていい」と聞くと「ええ、まぁいいですよ。吸い殻だけちゃんとしてくださいね」と。そうして吹雪模様のホームに降りて、一服しながら足跡ひとつないホームに自分だけの足跡を刻んでくる。


 特急と貨物列車が通過して、ようやく礼文を発車。やがて北舟岡駅へ。

 北舟岡駅は、ホームのすぐ下が海になっている駅。横浜の海芝浦駅も海に近い駅で、前にその駅の写真を見た時、最初この駅の写真か、と思ったくらい。間違いなく、日本にいくつかある「日本一海に近い駅」の、ひとつだろう。

 次は「まれっぷ」。漢字では「稀府」。北海道の地名だな、と思う。そうして、吹雪の中で日が暮れてゆく。晴れていたらこの海の向こうに、先ほど走ってきた森方面の対岸が綺麗に見えるのだけど。

○16:51東室蘭駅着 10分以上遅れて17時台に到着。
 一眼レフの方と共に乗り換え。次の汽車の発車時刻を過ぎていたけれど、ここでも次の汽車はちゃんと待ってくれている。彼は札幌まで。自分は地元の駅で途中下車。良い旅を、と車内でお別れ。

 そうして無事に地元へ到着。ほぼ全編移動の旅も終わり、今年はちゃんと屋根の下で年を越し。ン年ぶりの地元での正月を迎えて。そんなこんなの、年末年始。旅の感想は…そうだね。誰かに運んでもらう旅、ってのもなかなか、いい旅でした。

[参考]
○1日目(乗車時間:8時間ちょい)
 自宅→大船→宇都宮→黒磯→郡山→福島→仙台→小牛田(こごた!)→一ノ関
○2日目(乗車時間:5時間ちょい)
 一ノ関→花巻(宮沢賢治記念館)→盛岡→八戸→青森
○3日目(乗車時間:6時間半ちょい))
 青森→函館→森→長万部→東室蘭→実家

 トータル乗車時間は約20時間。運賃1,1680円(花巻のバス代除く)、宿泊2泊で1万円の旅、でした。おわり。

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