Azure Diary


平成二十五年 長月


■2013/09/08 日
 季節の変わり目。涼しさに秋を感じることができるのは、夏の暑さがあったからこそ。それは他の季節も同じで、秋があるから冬があり、冬があるから春があり。春があるから夏があり。四季とはそういうもので、それぞれ性格は全く異なるけれど、それぞれが他を引き立てながら、自分も他の季節に埋没することなく。どれかの季節が突出して価値を持つこともなく、価値が不足することもなく、四季として存在している。
 簡単に言うと、四季は、調和している。違うもの同士、うまくやっている。違うもの同士、うまくやってゆくこと。それが調和だと自分は思う。それは、いまそこにある全てのもの同士が、うまくまとまってやってゆく、ということだ。いまそこにある全てのものの中から、あるものを選択し、排除し、似たようなものだけを集めてまとまること。そういうことは、表面上どんなにまとまっていても、調和とは呼べない。

 休日は人の多い釣り場なので朝早くに行ってみようと、日の出前から行動開始。ただ、途中から雨になり、釣り場に行ってから雨が弱まるのを車の中で待っていた。その途中。つけていたラジオがニュース速報を伝える。7年後、2020年のオリンピック開催が東京に決まりました。と。
 7年後か、どこに住んでいるやら、と。そんなことをふと思う。恐らくこの瞬間、ニュースを聞いていた多くの人々が、7年後の自分は、と。考えたことだろう。7年後、か。自分には正直、7年後のことはわからない。7年前の自分に今の自分のことが、わからなかったように。

 ただし。7年前のことはわかる。なぜなら。ここに日記を書いているから。

 雨が上がってから釣りを始め、頭から足先までの長さなら40センチくらいのタコを釣る。タコはもうこんな感じで釣れるようになった。昼前に帰宅して、足2本をタコ刺しに。残りはタコご飯に。生タコでタコご飯をつくると、ご飯が赤飯のような色になる。これは発見。ただし、タコ刺しにする足は塩もみする前にあらかじめ切り分けておくこと(しょっぱくなる)。これは今回の教訓。


■2013/09/10 火
 電車に乗っていた。ドアの脇の手すりの部分に赤ちゃんを抱いた母親が立っており、自分はその後ろで吊革に掴り立っている。よちよち歩きくらいはできそうな赤ちゃんの顔が、後ろ姿の母親の肩越しに覗いている。ふと、赤ちゃんと目が合う。それからしばらく目を合わせているうちに、赤ちゃんがにへら、と無邪気な笑顔を自分に見せる。
 車内で何だか疲れていた感じの自分はその笑顔にふうと息を吐き、ふと、口には出さず赤ちゃんに問いかけてみた。「ねぇ、きみはどうしてうまれてきたの」赤ちゃんが、見せているその表情や仕種とは裏腹のしっかりした意思で、やはり口には出さず答えた。「このひとをまもるために、わたしはうまれてきたの」そう伝えると赤ちゃんは自分から目を逸らし、笑顔を解いて己を抱く母親の横顔を見詰めた。
 赤ちゃんを抱くその女性が誰かはわからなかった。というより、その人は誰でもあり、誰でもなく。自分が知り得る母親と呼ばれる人の誰かだと思えば、その人は自分が思ったその誰かの姿を自分に見せる。そんな感じだった。なので、そこに居たのは具体的な誰か、というわけではなく。自身が抱く「母親」という、イメージだけだったのだと思う。

 自分のイメージしたものが、その世界を構成するものとして、その世界に姿を現す。要するにその世界とは自分のイメージの世界であり。つまりこの話は、自分が今朝方見た、夢の話。

 車内に、ふいに携帯電話の着信音が鳴り響いた。誰だろう、と車内を見渡す。あれ、ひょっとしたら、自分のだろうか。そんなことを思っていると、ぱちっ、と目がさめた。鳴っていたのは、ベッドの脇に置いてあったスマホの目覚ましのアラームだった。

 今朝方みた夢を、これを書いている夜までおぼえているなんて、めずらしいこと。


■2013/09/16 月(秋のはじまり)
 祝日。しかし日中に台風がまさに関東を通過。ベランダに積んであるタイヤのカバーが飛んだら困るので、昨夜に紐を巻いて補強しておいたが、風が強まってから覗いてみると気球のように膨らんでしまっており。これはもう持たないな、とカバーごと撤去する。
 特に目立った被害はなく夕方に台風は過ぎ、風雨も収まる。外したタイヤカバーはこれを機に、と丸洗いして干しておく。そうして3時間くらいおいて、夜に見てみたらもう乾いていた。台風前に比べて、風が格段に、からっとしている。ふと、秋の風だな、と思う。どうやら自分が秋の風だな、と思うポイントは、風の温度ではなくて、風の湿度のよう。湿度が変わると、何というのだろう。風の質感が変わるのだ。その、手触りが。

 そんな風の手触りの変化を感じた今日を、今年の秋のはじまりとする。


■2013/09/20 金
 十五夜。十五夜らしい満ち満ちた月。十五夜も完全な満月とは限らないものらしいけれど、今年はその完全な満月になる年、とのことで、また今後はしばらく無いのだそう。まぁ見た目にはあまり変わらないのだろうけれど。とにかく今年は、完全無欠の十五夜の月。
 ふと、日記で過去の十五夜を辿ってゆくと。昨年は9月30日で、先週のような台風が過ぎ去った後の月。一昨年は9月12日で、月と共に木星が明るかったらしい。その前の年は北海道一周ドライブ中で、十五夜の月は富良野で車中泊しながら、と。過去、見ている場所はいろいろだけど、天気には恵まれているらしい。

 そういえば満月。大潮だなぁ。
 書かない時も時折釣りに行っているが、タコは結構毎回釣っていて、最近はタコばかりではなく「魚」も釣りたいな、と。アナゴがいるらしいので、アナゴ釣りの仕掛けを作成中。


■2013/09/23 月
 昨夜から朝まで徹夜で夜釣りをしてきたらこんなことになったので。


 80センチのアナゴ(クロアナゴ、という)は格闘の末背開きにし。骨切りをし。


 こうした。


 その他はこうして。




 おいしく頂きました。
 ※漁業権の設定区域(釣ったら駄目な区域)外で釣っているので、誤解なきよう。

■レシピ

○あなご丼
1 アナゴを釣ってくる。
2 表面を塩もみしてヌメリを取り、頑張って背開きにする。
3 適当に骨切りをして(3mm間隔くらい?)フライパンで焼けるサイズに切り分ける。
4 そのまま焼くと皮が縮んで丸まるので、皮と身の間に竹串を打って丸まりを阻止。
5 フライパンで裏表を焼いた後、水を少し入れて蓋をして蒸し焼きに。
6 かば焼きのタレを作る。(砂糖、酒、醤油を適量混ぜて煮立たせる)
7 焼いたアナゴをタレに漬けて更に焼く。また漬けて焼く、を数回繰り返す。
8 いい感じになったら、串を抜いてご飯に載せ、残ったタレをかけたら出来上がり。

○タコご飯
1 タコを釣ってくる。
2 内臓や目を取り、繰り返し塩もみして汚れとヌメリを綺麗に。吸盤の中まで丁寧に。
3 塩もみ後、水洗いして水気を切ったタコをぶつ切りにする。
4 米をといで水を捨て、酒と醤油と出汁の素を適量入れ、規定まで水を入れ混ぜる。
  (炊きあがりのタコの赤色で綺麗にご飯を染めるには醤油を少なめにするとよい)
5 ぶつ切りしたタコを入れて炊飯器にセットし普通に炊く。
6 炊きあがったらよく混ぜて出来上がり。


 手順1の難易度が高いが、おいしいので是非。


■2013/09/29 日
 九月も末だというのに、暑かった一日。日中、蝉が鳴いていた。今年最後の蝉かも知れない。今年もしこれ以降に蝉の鳴き声を聞いたら、その旨あとで修正を加えるとして。もしこの文が今年これ以降このままだったら、今日が今年最後の蝉の声を聞いた日。


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