Diary


桜前線追いかける旅の記録 前編


■2007/04/28 土 1日目
 午前中に準備をして、午後から出かける。甲府からR141を佐久市へ、標高を上げながら走る。標高1,300メートル。日本鉄道の最高地点と、最も標高が高い駅である野辺山駅を過ぎる。そして軽井沢、高崎市へ。いつの間にか群馬県。前橋市で夕食を済ませ、桐生まで街中を走る。
 桐生からは渡良瀬川沿いにR122を走る。真っ暗な、車通りも殆どない道。途中、道の駅「くろほね」に寄り、地図を開く。この先は日光。混雑回避のためには、夜のうちに抜けるのが正解だろう。でも、東照宮か。ちょっと寄ってみようか。連休入りしたけれど、朝一なら人もいないだろう。
 栃木県に入る手前の道の駅「富弘美術館」まで前進し、誰もいないダム湖脇の駐車場で22時前に就寝。暖房はいらないが、寝袋はまだ必要だ。

 さて。自分が住む静岡ではもうすでに桜は散っている。だが、前に住んでいた北海道では、大抵、桜が咲き始めるのは5月に入ってからだ。ということは、4月末から5月頭の頃、桜前線は東北のどこかをウロウロしているはず。なら、連休開始直後に出発しひたすら北上すれば、どこかで桜前線に追いつくことができるだろう。

 まだ未走破の東北地図を塗り潰しながら、桜前線を追いかけて北上する。
 満開の桜に。そして、まだ蕾の桜に。どこで出会えるだろうか。

 そんな旅の始まり。


■2007/04/29 日 2日目
 朝5時に起きて行動開始。6時には日光に入り、営業準備も始めていない土産物屋の駐車場に車を置いて、東照宮を散策する。


 散歩する人がちらほらしているくらいで、特に観光らしい人もおらず、静まった境内。朝一作戦は取り合えず成功。だが、肝心の東照宮本社の門は、参拝時間が午前8時からということで閉ざされており、中を伺うこともできない。開いていても参拝料が1,300円と予想以上に高い。どうせ開門する時間までは居ないので、見られるところだけをぐるっと散策する。


 7時くらいに日光を出て、R121を鬼怒川沿いに北上。土地勘は無いが、関東から東北へ向かう道の中では比較的空いているだろう、という勘で、この内陸の道を走ってゆく。次第に対向車線の交通量が多くなってゆく。上手い具合に人の流れと反対に進めているようだ。

 途中、山々を湖面に映した綺麗なダム湖を見つけた。


 湖面に新緑を載せた島々が浮かんでいる。そう思って車を停めて降りて行ったら、島に見えたのは水面から生えた木々だった。いや、生えているのではない。沈んだのだ。湛水が始まったばかりの新しいダムなのだろう。
 澄んだ水の底には、まだ生えていたままの姿で潅木が沈み、背の高い木々は幹の中ほどまで水没しながらも湖面に佇み、枝と若葉を湖上に広げ、その姿を水面に映している。静かな鏡のような水面に映るその姿は、実像と鏡像の境目を見失うほど。


 写真だと余計、どこを境目に天地が逆転しているのか判らない。
 上の写真のように見ると境目が空中にあるようにも見えるし、境目など無く、上下対象の明らかに変な形をした木が湖上に浮いているようにも見え、見詰め続けていると不思議な感覚になってくる。

 けれど、上の写真は上下が逆。実はこのようになっている。


 写真を縦に回転する時に回転方向を間違ったのだけど、縮小されたプレビュー画像上では全く気が付かなかった。
 このまま水が張られていたら、やがて立ち枯れてゆく木々。それでも生き生きと若葉を繁らせ、鏡のような水面から立つその姿は、切なくて、美しい。

 引き続きR121を走る。この辺り、沿道の桜が散り頃で、時折、路肩に積もった花弁を舞い上げながら走る。やがて、最近仕事で来たばかりの福島県に入る。会津若松を抜け、11時頃に喜多方に着き、昼食に喜多方ラーメン。太縮れ麺に馴染んだ元札幌市民としては、このくらいの太麺がラーメンらしくていい。美味しく頂いた後、その先にある道の駅「喜多の郷」に寄る。


 もう盛りを過ぎた桜の木々が花弁を散らしている。でも、花もまだ多く木に残っている。東京近辺ではもう青葉の桜。桜前線の尻尾は捉えたか。
 風が吹くと散ってくる花弁を捕らえようと、追いかけてぴょんぴょんと跳ねている子供がいた。

 米沢でR121からR13へ。沿道はずっと花吹雪。いつの間にか山形県。丘陵の斜面にあるビニールハウス。ああいう所でサクランボが育っているのだろうか。山形市を抜け、天童からR48を東へ。車の流れが良く、淡々と山形を抜けて宮城県に入り、仙台へと向かう。
 けれど、仙台ハイランド、という施設の辺りから急に流れが悪くなったので、途中からR457を北上するルートに変更し、仙台市中心部を迂回する。R457をしばらく行き交差した所でR4に乗り換え、道の駅「三本木」で今後のルートと宿泊場所、そして風呂などを検討する。
 仙台の地図を見ながらそこでまた「松島か…」となり、天橋立てと宮島はもう見ていたので、ついでだから日本三景をやっつけようと計画。ただ、ここも超有名景勝地。混雑を避けるため、再び朝一作戦を取ることにする。田んぼと川沿いの道を走り、温泉付きの道の駅「上品の郷」まで移動し、また早めに就寝。

 そういえば、ここ宮城県を走ったことで、自分の当面の目標だった『車で全都道府県(沖縄除く)走破』をついに達成した。本州(淡路島経由)四国間の橋以外は、高速道路未使用での達成。やればできるものだ。けれど、また次の目標、捜さないとな。


  Title   中編 >>
Kaeka Index.