Diary


桜前線追いかける旅の記録 中編


■2007/04/30 月 3日目
 ちょっとだけ逆走する形で南下し、朝5時過ぎに松島着。松島といっても範囲が広く、どこから見るものなのかよく判らないので、取り合えず「まつしま」という名の付いた駅へ向かう。その少し先に展望台があったので、そこから眺める。


 何となく似ていたので、昨日のダム湖の木々を思い出す。この松島を見てからあのダム湖の木々を見たら、「ああ、松島みたいだ」と思っただろう。
 松島を出て、ここからは海岸線のR45を北上する。夏は海水浴場になるらしい大谷海岸というところで、砂浜を少し散策。その後すぐに岩手県入り。青森、秋田、岩手の三県は、以前北海道に住んでいた頃に一度走った。あの時は職場の仲間と「盛岡へ冷麺食いに行くぞー!」と、3日かけて盛岡まで来て、冷麺食べて帰ったんだっけ。懐かしい。
 今回は内陸ではなく、三陸海岸沿いを走る。学校の地理で習ったとおり、海岸線の地形はものすごく複雑なのだけど、国道は比較的なだらかでスイスイと進む。10時半頃に釜石を通過。15時頃に青森県入りする。
 ラジオで「八戸の桜は満開、弘前城公園の桜が八分咲き」とやってるのを聞く。弘前城では「さくらまつり」が開催中で、この連休間に予想される人出は200万人以上。全国の行楽地の中でも最高の人出が予想される、とのこと。
 そして、桜満開の八戸市を通過。十和田市からR4を七戸へ。ラジオで時折流れる「お花見情報」では、まだ桜前線は津軽海峡を渡っていない。ということは…ついに桜前線を下北半島に追い詰めた!

 道の駅「しちのへ」を拠点に周辺を調べ、近くにあった「杉の子温泉」でお風呂。陽が沈んでから下北半島入りし、更に北上する。その時だった。ラジオの夜のニュース。

 『今日、函館五稜郭公園の桜が開花したとの…』

 脱力。1日差で逃げられるとは。
 まぁ全ての桜が一斉に咲くわけでもないから、この辺りにもまだ最前線があるとみて問題はないだろう。ただし夜間なので周囲の桜がどうなっているのかは確認できず。
 下北半島の中ほどにある道の駅「よこはま」まで移動し、就寝。結局本州の端まで来てしまったので、明日は最北端へ行ってこよう。


■2007/05/01 火 4日目
 所々に「恐山」の看板を見ながらR279を北上。むつ市を過ぎて津軽海峡に出る。
 時折沿道に桜並木があるけれど、花の姿はない。五分咲き、三分咲きなどの地域は夜間の内に通過してしまったようだ。


 桜観察をしながら津軽海峡沿いを大間崎へ向かって走る。「赤川台」という石碑が建つ展望スペースに車を停め、今まさに開こうとしている花のある木を捜す。


 やがて、ちょうど蕾から開きかけの花が揃った枝を見つけた。
 どうせもう道が尽きる。ここをゴールにしよう。


 5月1日、午前7時30分。ここをもって「桜前線」に到着、とする。
 ここまでの走行距離は、およそ1,200km。


 と、イマイチ盛り上がりに欠けつつも、桜前線を追う旅はひとまず終わった。けれど、ただ帰るのも何なので観光でもしながらのんびり行こう。
 その後、大間崎へ向かって走り、8時頃に到着。大間といえば、最近はもうすっかり「マグロ一本釣り」で、まず目に入ったのもマグロの碑。


 その傍に最北端の石碑。沖合いには弁天島。その向こう。写真ではわからないけれど、薄っすらと故郷、北海道が見えていた。


 石原の海岸へ降りて、ちょっとだけ北海道に接近する。そして上がってくると、再びマグロ。正面から見るとツバメみたいな顔で、何かおかしい。


 駐車場に戻り、停まっていた鹿児島ナンバーに驚いたりしながら、今後のルートを検討する。もうこの旅に目的はないので、あとは思い付くままに帰ることにする。このままぐるっと陸奥湾を一周して、隣の津軽半島も周って、龍飛崎にも寄って…とやっていたら、予想走行距離が軽く300キロを超える。
 でも龍飛崎までなら夕方には着くだろう。そう踏んでそのルートのまま出発。下北半島を下り、野辺地からR4を青森市まで。青森市からR280で津軽半島を北上。陸奥湾から再び津軽海峡に面するところまで来る。

 今別という辺りで『青函トンネル入口』の看板を発見。寄り道する。


 公園が整備されていて、列車が通過する時に水を吹き上げる噴水があったが、整備中だった。
 そこにあった列車通過時刻表を見ると、まもなく特急が北海道に向けてトンネル入りする時刻だったので、その特急が来るまで待つ。

 16時5分。時刻どおりに列車が通過して行った。

 17時前に龍飛崎着。「津軽海峡冬景色」の歌碑があった。
 

 台座中央の赤いボタンを押すと、龍飛崎が出てくる歌の2番が大音量で流れるようになっている。碑の中央に大きく刻まれてる歌詞も、2番の歌詞。

 ただ、来た人皆がボタンを押すので、歌が途切れることが無い。
 エンドレスで流れる演歌を聞きながら、なんとなく襟裳岬を思い出す。

 その後、石段を登って灯台へ。

 灯台以外には、海上自衛隊の施設と、青函トンネル工事の基地跡、遠くの斜面に風力発電の風車があった。

 日本本土の東西南北をはじめ、色々な岬に立った。岬はいつも、自分が目指す所。そして、目指して走ってきた道が尽きる所。ふと思う。走ってきた道が尽きた、岬の先端。その先には必ず、道など無い遥かな海原が広がっていて。そして、そこにはいつでも風が吹いていて。道を無くして立ち停まる自分を、風が追い越して。海を渡ってゆく。

 龍飛崎を出て、日本海へと向かう。龍飛崎を出るとすぐに竜泊ライン、という、日本海に向かって落ちてゆくような道になる。ただし、かなり複雑なので、運転していると景色を見ている余裕が全然ない。


 下北半島も津軽半島も、こうしたアップダウンの激しい折り畳まれた峠道が多い。自分の車には普通に平地を走る時のモードと、こうした峠道を激しく攻めるためのモードを切り替えるボタンがあり、個人的に『本気ボタン』または『じやぁ行きますかぁ!ボタン』と呼んでいる。今日は何度このボタンを押したことか。

 その後、十三湖を抜けて津軽市…じゃなかった「つがる市」へ。そういえば陸奥市も「むつ市」だった。増えたな。平仮名。とにかく、そのつがる市で「しょこちゃん温泉」という温泉に寄り、明日の予定を検討。また朝一作戦を思いついたので、少し南下し、鶴田町の道の駅「つるた」まで移動。翌朝に備えて早めの就寝。


■2007/05/02 水 5日目





 基本的に人混みへは行かない。「博多どんたく」と並んで連休間の人出が日本最高の「弘前さくらまつり」なんて、避ける事はあっても、決して行くつもりは無かった。
 しかし、ここは桜満開の弘前城。ただし、時間が朝の6時。まつりはやっていない。けれど、桜にはそんなこと関係ない。
 周辺の地理が良く判らないので城の周りをぐるぐる走っていたら、市役所があった。特に誰もいないようなので、そこに車を置く。でも、この時間に開いてるのか、と思って堀の脇をずっと歩いていたら、普通に入れた。天気は小雨だったが、その分、人もまばら。日中なら有料になっているらしい天守周辺も、この時間は無料で開放されており、心ゆくまで城内の桜を見ることができた。









 これほどの桜の名所で桜を見る、というのは、人生で初めてかもしれない。
 けれど、色々な桜が溢れているのを見続けて、何かもうお腹いっぱいな感じ。ふと見上げると、秋に色づくこんな木も花を咲かせているのを見つけ、何だかほっとする。


 そして、花の裏側を覗いたり。






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