『褐色に浸る時間』
2000年


001 褐色に浸る時間
褐色に浸る時間
泥水に群がるアゲハ
釣り合う距離を探るシーソー
ポケットの中に笑顔をひとつ
もしもクラブのエースが四つ葉なら?


002 望みは元の更砂に
四季それぞれの音
サウナの心理学
命日
望みは元の更砂に
狂棟の君へ


003 これ、あげる!
声援は一瞬の風
少年とナイフ
これ、あげる!
真昼間の星
今年最大の獲物


004 真昼のベンチ
地肌を晒す季節
遡行
真昼のベンチ
風船に花の種を添えて
心の引き出しに収まらなかったもの


005 最初に掴んだもの
うたたね
ひとつ勉強になりました
最初に掴んだもの
ファインダーの中の幽霊
漁火


006 老い人の家路
電車と汽車
暖房前線、到着
産まれたばかりの我かも知れず
それぞれの時間
老い人の家路


007 この夏の残像
 初霜が降りた朝
 吹雪く初雪
 ある「素敵な」ココロの日記
 この夏の残像
 ご協力、ありがとうございました


008 織物の絵柄の意味
 織物の絵柄の意味
 前の住人が残したもの
 誰かの眠りの、夢の中
 特異な名前
 家路でありますように


009 僕は真北に向かってキーを打つ
 玉虫色を見る、複数の眼
 銀の車に毛が生える
 川はどちらに向かって流れるか?
 一発の銃声が二度響く夜
 僕は真北に向かってキーを打つ


010 カメさんがいっぱい!
 カメさんがいっぱい!
 度量衡換算表
 記念写真の前と後の光景
 気分
 命を奪える存在


011 もう二度と会わない人への手紙
 何となく誰かと一緒にいるという事
 機械の心
 大人のがらくた入れ
 もう二度と会わない人への手紙
 書きたい事を忘れた日


012 くびれた現在を砂が流れる
 真冬の冷蔵庫
 くびれた現在を砂が流れる
 けあらしの夜
 舌触れて蘇った傷口
 絵本の片隅


013 愛って、なに?
 綺麗な土では無毒な果実
 足りないブロック
 愛って、なに?
 喉を潤す水が飲みたい
 とっさの判断


014 雪降る街角のスナップ
 雪の暖かさ
 仕事納め
 無数の寂しさが交錯する日
 雪降る街角のスナップ

 

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